十文字一夫理事長のご霊前に、学園を代表し、お別れの言葉を申し上げます。仰げば尊き師?恩人であられたので、先生とお呼びします。
　ご療養快方の祈りは叶わず、みな驚き、喪失感、悲しみに包まれています。
　先生は、1984年の本学園理事ご就任前から、第二代理事長であるお母様の良子先生を補佐し、1966年の短期大学の開学を支えられました。
　1987年、第三代理事長に就任され、良子先生の「学園の生命は無窮」というご遺志を受け継ぎ、創立者こと先生以来の伝統と歴史を踏まえ、学園経営に邁進されました。
　とくに、私学としての独自性を重視し、三つの目標、一つ「建学の精神また人の縁を大切に」、一つ「社会変化への速やかな対応」、一つ「学園全体の一体化」に取り組まれました。
　理事長として最大のご業績は、四年制大学の開学でしょうか。現在、大学は9学科、入学定員760名の中規模大学へと発展しました。博士後期課程を擁する大学院設置の際は「大学としての形が整った」とのお言葉をいただきました。
　先生が大切にされた社会変化への速やかな対応。教育効果をこれに適うよう向上させる観点から、中学?高校のカリキュラム改革、大学の学科改編を含む教育体制改革が、弛みなく進められました。
　一方、長い目で、育ての心からのサポートに注力されました。サッカー部の活躍がその好例です。「文武両道の十文字」がブランドとなりました。女子スポーツの隆盛、女性活躍を予測された先生の先見性の賜物です。
　2022年、学園創立百周年。先生のリーダーシップのもと、様々な記念事業が成就し、新たな百年への道を踏み出しました。
　巣鴨の理事長室には、野球のユニフォーム姿の先生が、勝利カップを受ける写真があります。先生は、東京教育大学附属高校野球部で、四番?キャッチャー、キャプテンとして鳴らされました。学園歌の「鍛え」の実践?実現そのものです。このご経験を学園経営に活かされたのだと思います。
　広く目が行き届く観察力、先を読む先見性?洞察力、人の縁を大切にする心、組織まとめのリーダーシップは、キャッチャー、キャプテンの資質と通じます。
　強打者の気概?勇気もお裾分けされました。教育体制改革に向かう私達に、与謝野晶子の「劫初より作りいとなむ殿堂に われも黄金の釘一つ打つ」を引き合いに、新たな挑戦には、黄金の釘を打つ気概?覚悟が必要だと励まされました。
　先生、私達は、厳しくも包容力ある心優しいリーダーを失いました。今まで私達の人間としての成長をサポートしてくださったことを、深く感謝申し上げます。しかしこの先、私達には「学園の生命は無窮」を持続させる使命があります。険しい道ですが、先生の目標である学園の一体化の気運も高まりました。今は悲しみの中ですが、学園の新たな管理運営体制のもと、十文字ワンチームの精神で、使命を果たして参ります。
　どうか安心してお旅立ち下さい。ご冥福を心よりお祈り申し上げます。


真人网娱乐平台_888真人娱乐网址@６年４月２２日
学校法人十文字学園一同代表
志村　二三夫