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十文字学園女子大学スペシャルコンテンツ

特別対談 土井善晴先生 相馬満利先生

本学の特別招聘教授で料理研究家の土井善晴先生と、2012年のソフトボール世界選手権に日本代表として出場した人間生活学部健康栄養学科助教の相馬満利先生の対談を全6回にわたって紹介します。今回、初めての対面となったお2人の座談会。土井先生の「なぜ人間は動くの?」という根源的な疑問からスタートした対談は、スポーツと料理の意外な共通点へと発展していきました。

目次

第1回
スポーツを楽しむについて
第2回
経験の無限の蓄積が、偶然をものにする力(セレンディピティ)を呼び込む
第3回
「一生懸命」のプロセスが、成長につながる
第4回
無意識、無心から「ゾーン」への昇華
第5回
「他者を思うこと」で、力を発揮できる
第6回
スポーツと料理の“道具”を使うコツとは?
第6回

スポーツと料理の“道具”を使うコツとは?

土井 それでは改めて、相馬先生のご専門についてお話をお聞かせいただけますか。

相馬 私の専門はスポーツバイオメカニクスという分野です。

土井 それはどんな分野なんですか?

相馬 バイオメカニクスというのは、「生体力学」と呼ばれる学問分野で。それをスポーツの分野に応用したのがスポーツバイオメカニクスです。具体的には、運動しているときの体の動きや、動作の仕組みなどを物理や力学などの科学の知識を用いながら解明していくもので、例えば、解析用のプログラムを使って力学的なデータを収集することで、トップアスリートの動きが優れている理由を数値で示すことができます。今は、競技ごとに向いている筋肉や脂肪の特性を分析し、まだスポーツを始めていない子どもたちの体を測定して特性を見て、その技能を伸ばしていくなどの構想を抱いています。

土井 長距離ランナーと、短距離ランナーの筋肉の色が違うらしいと聞いたことがあるけれど、そういったことを調べているんですか?

相馬 そうです! 人が動くときに主体となる骨格筋は、筋繊維と呼ばれる細胞からできていて、筋繊維は、赤い赤筋、白い白筋に分類することができます。長距離ランナーは赤筋、短距離ランナーは白筋が多いと言われているんですよ。

土井 そういったようなことを研究されているということなのですね。それは、面白い研究ですね。バットやラケットの使い方のようなものも、きっといろいろ研究されるんだと思いますけど、調理道具なんかも一緒で、コツがあるんです。包丁は、ぽんと手を叩かれたら落としてしまうくらい軽く持つ感じでいいんです。軽く持って、包丁の切れ味、重みに任せて切るくらいでないと、繊細な切りものはできないんですよ。

相馬 それは、バットと同じで、インパクト、つまり切る瞬間だけ、力を入れるということでしょうか?

土井 そうです。この前も授業で包丁の使い方について説明するときに、テニスプレイヤーが最初からぎゅっと力を入れてラケットを持っていたら、うまく打てない。軽くラケットを持っていて、当たる瞬間だけ力を入れるということを例に出して説明しましたが、やっぱりバットも同じですよね。

相馬 同じです。ボールを待っているときは、手を叩かれたらバットが落ちてしまうくらい軽く持ちます。力を入れるのはインパクトのときだけで。

土井 なるほど、それは同じですね!

相馬 それと、ボールを打つときは、バットのヘッドの重さを感じつつ、自分に合ったスイングを心掛けます。道具をいかに自分の体に合わせて使うかを考えていますね。

土井 それも包丁と同じです。大事なのは全身で包丁を使うということ。もし腕だけで動かしていたら、すぐにだるくなって10分と持たないでしょう。包丁の重さを使うというコツが分かってくると、自分の力をあまり使わないで、楽にできるんです。これは包丁だけではなくて、すりこぎで食材をする作業なんかも同じです。だから、私は延々、すりこぎですっていられますよ。それって、道具が体の延長になるような感覚です。すごいことですよね。

相馬 道具の扱い方にも共通点があるとは。面白いですね。道具といえば、昨年度の卒業式の土井先生の挨拶が忘れられないです。料理は、お皿にさまざまな食材を盛り付けるけれど、食材が大事なのではなく、器が大事だというお話をしてくださって???。

土井 私の話を覚えていてくださったんですね。うれしいです。器って、哲学者がよく例えに使いますが、中にものを入れる道具なので、ものごとを受け入れる力を器で表現しています。いいもの、悪いものに関わらず、みんな受け入れて、それを自分がどうするかを考えるのが大切。器が小さいと、たくさんのものごとが入らないでしょう? だから、いろいろなものを受け止められる大きな器を持ってほしいというお話をしました。

相馬 あの時、先生のお話を聞いて、ふと考えました。誰かに対して「愛や心を渡すこと」は自分自身の器が大きくないとできないけど、それを作るのが、「学び」であり「知識」だなと。何かを経験して学ぶことで、自分の器が大きくなっていくのかなと思いました。誰かを大切に思うことや愛すること、受け入れること、そして認めることは、時間をかけて得た深い知識や経験がないとできないことだなと。

さらに、「ものごとを受け入れる力」には、「ポジティブ」という言葉をイメージしました。 ポジティブな人は、グロースマインドセットといって、改善は可能だと考え、全ての機会を成長と学習のチャンスと捉える考え方を持つ傾向にあります。 こうした態度を維持すれば、感謝の心を忘れず、人生のあらゆるポジティブなことに注意を払えるようになるのではないかなと。さらに、ポジティブな考え方を実践すれば、自然と周りもポジティブになると思うんです。競技という枠組みではなく、純粋なスポーツの楽しさに気づくことができると思うんです。人生を豊かにするものがスポーツであるということですね。

土井 そんな風に考えてもらうきっかけになったのはうれしいですね。ポジティブというと、最近、学生の皆さんのポジティブな姿勢を感じていて。調理実習の授業のなかで、学生の皆さんの包丁の扱いがどんどん上手になってきているんですよ。聞いてみたら、家でちゃんと練習してきているんです。授業をしていても学生のみなさんが、受け身ではなくなっているのを感じますね。

相馬 それは素晴らしい傾向ですね。本当に、本学の学生はピュアでとてもかわいいなといつも思います。もちろん、頭に血が上ることもありますが???。主体的になってきていると私も感じますが、もっともっと失敗を恐れず挑戦をしてほしいとも思います。私みたいな若輩者が言うのもなんですが、人生は一度きりですからね。今この瞬間にどれだけ全力でぶつかれるかが大切だと思うんです。それが絶対に自分の引き出しになると思うんです。

土井 その通り。相馬先生の熱い思い、素晴らしいですね。ところでちょっと話を戻しますが、一番最初に、スポーツの語源は「余暇」だとお話してくだったでしょう。実は、余暇と料理って繋がっているんですよ。

相馬 え、そうなんですか?

土井 これは、ハーバード大学生物人類学教授のリチャード?ランガム氏が唱える説ですが、人間は賢いから料理したのではなく、料理をすることによって人間になっていった。どういうことかというと、料理をすることは、食材を加熱したりして、より消化しやすい状態にして食べるということ。「外部消化」という言い方もしますが、そうすることで消化に必要だったエネルギーが少なくて済みます。すると余剰エネルギーが生まれて、脳が発達したとも言われています。料理によって合理化された消化によって時間が短縮され、余暇が生まれた。人間は、初めて何をしてもよいという自由な時間を手にしたのです。

相馬 なるほど! 人間が料理をするようになったことが、余暇につながったのかもしれないのですね。料理とスポーツにそんな密接な関係性があったとは!

土井 だから、料理とスポーツの話って共通点も多くて盛り上がるのかもしれませんね。

相馬 本当ですね。

土井 最初の「人間はなぜ動く?」の疑問に立ち返ると、やっぱり、家族や仲間のため、つまり他者のために動くからじゃないかなと思うんです。誰かが困っていたら助けてあげたい、家族を喜ばせたい、そんな気持ちで動くんじゃないかなと。料理もスポーツも、他者との関係性が大切で、それによって発展してきたと感じているので。

相馬 先生のおっしゃるとおりだと私も強く思います。人の体には、約200個の骨と400種類以上の筋肉があり、これらが協力し合って体を支えています。その司令塔が脳です。そう考えると、今の自分があるのは、支えてくれる家族、恩師、仲間のおかげなんですね。結局、自分一人では何もできない。動くことができない。筋肉や骨の役割と同じではないかなと思います。その思いを伝えるのが神経であり、動かすのが心であるのかなと思います。

土井 なるほど! 本当にそうですね。スポーツと料理には、いろいろな共通点があることも分かったし、今日はとにかく面白かった。楽しい時間をありがとうございました! またぜひ、お話させてください。

相馬 こちらこそ楽しかったです! またぜひよろしくお願いします。

(終)
2022.12.23

PROFILE

土井善晴(どい?よしはる)先生プロフィール

1957年大阪府生まれ。スイス、フランスでフランス料理を学び、帰国後、大阪の「味吉兆」で日本料理を修業。土井勝料理学校講師を経て、1992年に「おいしいもの研究所」を設立。本学では特別招聘教授として教鞭を執る。東京大学先端科学技術研究センター客員研究員。『一汁一菜でよいという提案』(新潮文庫)、『一汁一菜でよいと至るまで』(新潮新書)、『料理と利他』(中島岳志共著?ミシマ社)など。

相馬満利(そうま?まり)先生プロフィール

1990年神奈川県出身。2012年、第13回世界女子ソフトボール選手権大会で大学生唯一の日本代表として出場。ポジションはショートで、上野由岐子投手らとともに42年ぶりにアメリカを倒し世界一となる。2013年、ルネサスエレクトロニクス株式会社(現:ビックカメラ)に入社し、日本代表としてアジア大会優勝と日本一を経験。現在、十文字学園女子大学 人間生活学部健康栄養学科助教。専門は、スポーツバイオメカニクス、形態測定学、トレーニング科学など。